程よい酸味でさっぱりとした味わいのしめ鯖は、老若男女問わず人気の食べ物です。刺身のような生感がありながらも、刺身より日持ちするのも長く愛されている理由です。ただ、時に食中毒を引き起こす事もあり、食中毒になればかなり辛い思いをしなければいけません。この記事では、しめ鯖で起こり得る食中毒についてその症状や予防策についてご紹介します。

しめ鯖で要注意なのはアニサキス

しめ鯖の大敵となるのがアニサキスで、しめ鯖を食べた事でアニサキス食中毒になったという人は少なくありません。アニサキスとは白い糸状の体を持つ寄生虫で、サバやイワシ、サンマ、イカなど生きた魚介類の内臓に生息しています。アニサキスが原因で起こる食中毒には、食後数時間して発症する急性胃アニサキス症と食後10時間後～数日後に発症する急性腸アニサキス症があり、いずれも腹部に激しい痛みが起こり、吐き気や嘔吐、発熱などを伴うケースも多く見られます。

しめ鯖がアニサキスが原因の食中毒のリスクが高いとされているのは、酢でしめているから安心と勘違いしている人がいるためです。確かにしめ鯖は他の刺身に比べて日持ちするものではありますが、アニキサスに関して酢は全く効力がありません。｢酢でしめる｣以外に｢塩漬けにする｣、｢わさびなど薬味をつける｣といった調理法も無意味です。購入したしめ鯖を食するのはともかく、自分で生の鯖を使ってしめ鯖を作る場合は正しい予防策を取って調理する必要があります。

アニサキスの予防策

基本的に、アニサキスは60度以上で1分以上加熱するか、マイナス20度以下で24時間以上冷凍することによって死滅します。鮮度の落ちた魚なども加熱すれば、確実にアニサキスを死滅させて安心して食べる事が出来ますが、しめ鯖を作る際は加熱の工程が無いため、加熱以外の方法で予防しなければなりません。調理の手順として、まず鯖を3枚におろしますが、この時に内臓を素早く取り除きましょう。アニサキスは元々内臓に存在していますが、鮮度が落ちると内臓から可食部位の身へ移ろうとするため、なるべく早く処理するのがポイントです。さらに取り除いた内臓もまな板に放置せず、すぐにゴミ箱に捨てましょう。

また、鯖をおろす際は目視で幼虫を確認しておきます。アニサキスは体長2～3センチ、白い糸のような見た目で目視でも発見することが可能です。調理する前にアニサキスの特徴を知っておけば、もし発見した時は見逃さずに処理出来ます。幼虫が這いまわっている姿を見ると心配になるかもしれませんが、アニサキスそのものを食べなければ食中毒を発症する心配はありません。予防策の中では一番単純で、簡単に実践できる方法と言えます。

内臓を取り除き、目でアニサキスがいるかを確認した後は一度冷凍しておきましょう。アニサキスは低温に弱く、冷凍すると死滅します。死滅させるにはマイナス20度以下で24時間以上冷凍するのが確実ですが、家庭の冷凍庫はマイナス18度に設定されているものが多いため、冷凍時間を48時間以上に延ばしましょう。また、食べる時もよく噛むという有効な予防策があります。アニサキスの幼虫は刺激に弱く、傷がつくだけで死滅します。調理する際に細かく切り刻むという方法もありますが、しめ鯖として食するにはある程度の大きさが必要になるため、切り刻まない代わりに自分の歯でよく噛んで食中毒の発症を予防しましょう。

予防対策を徹底し、しめ鯖を美味しく食べよう

アニサキスは怖い寄生虫ではありますが、加熱と冷凍によって完全に死滅させる事が出来ます。しめ鯖を作る際は加熱の工程がないものの、内臓を確実に取り除き、目視と冷凍、しっかりと咀嚼して食べることで発症のリスクを減らせます。過度に恐れる必要はなく、正しい知識を持って一つ一つの作業を丁寧に行えば、安全に美味しくしめ鯖を堪能出来ます。アニサキスに注意しながら、しめ鯖を楽しみましょう。