しめ鯖は古くから庶民の味として親しまれていますが、その一方で食中毒を起こしやすいイメージを持っている方も多いかもしれません。しかし、適切に扱えば他の食品と同様に食中毒の心配はほとんどありません。美味しいしめ鯖を安全に味わうためにも、なぜしめ鯖は食中毒が起きやすいイメージがあるのか、安全に扱うにはどうすれば良いのかを学びましょう。
鯖の特徴やしめ鯖作りの問題点について
しめ鯖に限らず、鯖は古くから食中毒を起こしやすい魚として知られていました。身がもろく崩れやすい上に劣化しやすく、鯖の生き腐りという言葉があるほどです。そのため、鯖は身を引き締めるのと劣化を防ぐために酢に浸すのが普通でした。酢で身を引き締めることをしめると言い、そこからしめ鯖という加工方法が定着したのです。
それでも食中毒が頻繁に起きましたが、これは昔のしめ鯖作りが不衛生な環境で行われていたことが原因でした。雑菌が付着した手で鯖の切り身に触ったり、古い酢を何度も使い回すなど食中毒の原因は様々でしたが、衛生管理の重要性が認識されるようになってからはしめ鯖作りの方法も変化し、清潔な環境で行われるようになっています。
実はしめ鯖による食中毒は衛生上の問題よりも寄生中の一種であるアニサキスが原因の多くを占めているのが実状です。アニサキスによる食中毒は衛生的なしめ鯖作りを徹底しても完全に防ぐことは非常に困難と言えます。
アニサキスによる食中毒の症状
寄生虫の一種であるアニサキスは鯖に限らず、アジやイカ、サケなど様々な種類の魚介類に寄生しているありふれた生き物です。しかし、鯖以外の魚介類のほとんどは食べる際に高温で加熱するのでアニサキスは死んでしまいます。加熱処理で死んだアニサキスは食べても無害ですが、生きた状態で飲み込んでしまうのは非常に危険です。アニサキスは胃壁に噛み付いて穴を開けようとしますが、この際に腹痛が発生します。アニサキスによる腹痛は非常に強く、人によっては失神する可能性も否定できません。腹痛以外の症状として激しい嘔吐がありますが、いずれの症状もアニサキスを体外へ排出しようとする免疫機能が過剰に働いた結果です。
誤ってアニサキスを飲み込んでも、そのすべてで食中毒に見舞われるわけではありません。アニサキスによる食中毒はアレルギー症状の一種であり、個人の体質で症状の程度が大きく変わります。今まではしめ鯖が平気だった人も、ある日突然食中毒に見舞われるケースもあるので注意が必要です。
安全にしめ鯖を食べる方法
アニサキスは酢に浸した程度では死なないほど強い寄生虫です。確実に退治するなら加熱するのが最善の方法ですが、しめ鯖は生の切り身を使うので加熱はできません。加工済みのしめ鯖を購入するのが無難と言えますが、手作りのしめ鯖を味わうなら下ごしらえに細心の注意を払う必要があります。
生食用の新鮮な鯖を購入し、内臓をすべて取り除いて入念に洗います。これはアニサキスは多くの場合、柔らかい内臓に寄生しているためです。汚れを洗い流した後は切り身をマイナス20度以下の低温で24時間以上冷凍します。アニサキスは低温に弱く、この温度設定で完全に退治することが可能です。アニサキス以外にも細菌によって食中毒に見舞われる可能性があるので、清潔に扱うことを忘れないようにしましょう。
手作りのしめ鯖はすぐに食べ切るのも食中毒を防ぐ方法になります。酢でしめていますが、鯖は元々傷みやすい魚なので長持ちしません。長く置くと風味も落ちるので、安全で美味しいしめ鯖を楽しむなら少量ずつ作ってその都度食べ切るのが正しい方法と言えるでしょう。
食中毒の原因と衛生管理の重要性を正しく理解する
しめ鯖を安全に美味しく食べるためには、なぜ食中毒が起こるのかを正しく理解する必要があります。しめ鯖は生の切り身を酢漬けにして作る食品のため、アニサキスによる食中毒被害のリスクが比較的高い事実は否定できません。安全にしめ鯖を味わうためにはアニサキス退治を徹底する他、食中毒を引き起こす細菌の繁殖も未然に防ぐことを心がけましょう。